病因シリーズ②『寒邪』

(筆者:高橋 裕子)

自然界の「寒邪」が引き起こす現象に似た症候を示す病邪をいう。寒冷は氷結や凝結を生じるところから、以下のような特徴をもつ症候を、寒邪による病変とする。

 

《寒邪の特徴・病証》

①    冷やす(全身および局所の冷感症状をあらわす)

例えば全身が寒い、手足が冷える、腰部が冷える、腹部が冷える、寒気などの症状をあらわし、さらには分泌物や排泄物がサラサラで、薄く透明になる。いずれの症状も寒い日や冷やすと病状が悪化し、温めると緩和するという特徴があります。

 

②    収斂性がある(寒邪は縮まる、ひきつるなどの特徴をもつ)

寒邪が体表に侵入すると、汗孔が閉じ、無汗となる。また、寒邪が経絡に侵入すると筋のひきつれやこわばりなどの症状をおこします。

  

③    凝滞性がある(寒邪が体内に侵入すると気血の流れが停滞する)

具体的には、こわばり、激しい痛み、運動制限、痛みは動作で悪化するなどの症状をおこします。

 

④    陽気を損なう(寒邪が停滞するとまず陽気を損なう)

具体的には体が冷える、足腰が冷たい、尿が近い、尿が多くて薄いなどの陽虚症状をあらわします。

 

 

 

 

《寒邪の病証》

①    寒邪が表に侵入した時の症状

激しい寒気(悪寒)、ひきつづき発熱、寒気は温めても変わらない、汗が出ない(無汗)、頭痛、うなじや背中のこわばり、関節痛など。

 

②    寒邪が経絡に停滞した時の症状

激しい痛み、痛む場所が一定する、患部の腫脹、すべての症状は温めると緩解し、冷やすと悪化するなど。

 

③    寒邪が臓腑に侵入した時の症状

腹痛、下痢、腸鳴、嘔吐、手足の冷えやひきつれなど。