『虚症』と『実症』

                                                                      (筆者;漢方サロンこころ 川那辺貴弘)

「あなたは体格がいいからから『実症』で、あなたは痩せているから『虚症』です」という話を良く耳にしますが、実際はそれほど単純ではありません。けれども、それ程むずかしくもないので、今回は『虚症』と『実証』のお話をわかりやすくいたします。

 

 何が『虚』(少ない)で何が『実』(多い)なのか?

・『虚症』とは?

人の身体は中医学で考えると『気』『血』『津』と『精』の四つで構成されています。『虚症』とはこの『気』『血』『津』『精』のいずれかが『体に対して不足している場合を指します。』

身体ががっちりしていても、疲れ易ければ『気』が少ない『気虚』にあたります。また普通に生活が出来ていてものぼせや手足のほてりがあれば『津』の少ない『陰虚』にあたります。

(※陰≒津)

 

・『実証』とは?

実症とは「体に悪さをする『邪』が停滞している状態」を指します。この『邪』ですが、大きく分けて二つあります。一つ目は体の外から侵入してくる『外邪』で、風邪などがあてはまります。二つ目は体の内から発生する『内邪』で、食べ過ぎによる胃腸の不調や、飲みすぎによる肝機能の低下などがあてはまります。

 

・『虚』と『実』が一緒に存在する場合。

虚証と実証が同時に発生する事もあります。例えば『冷えのぼせ』です。下半身の『虚症』の為に足が冷え、下半身に行かない気が上がって上半身が火照る『実証』となります。

この事を『上実下虚』と呼び、虚と実が同時に存在しています。このような例は少なくないのと、五臓六腑の各部位で『実』もあれば『虚』もありますので、簡単に『虚症』、『実症』と分けられないのです。

 

 

虚症の特徴

 生まれつき虚弱な方もいますが、一般的には『過労』、『睡眠不足』、『飲食の不摂生』などが原因で引き起こされます。多くの場合は体を補い元気にする『補剤』と呼ばれる漢方を服用します。

主に用いる漢方は『衛益顆粒』『麦味参顆粒』です。

実症の特徴

 外邪の場合は寒さや暑さ、湿気など季節の影響が原因で引き起こされます。この場合は『解表薬』と呼ばれる漢方を服用いたします。主に用いる漢方は『葛根湯』、『天津感冒片』『勝湿顆粒』です。

 内邪の場合は外邪に誘発される場合もございますし、また日頃の不摂生が原因にもなります。実と虚が同時に存在している場合が多いので体の状態を考えながら漢方を飲み分けます。

 

最後に

『虚証』と『実症』は移ろいやすい場合が多く、季節の影響も受けるので判断に困りましたら是非ご相談ください。