『精』

(筆者:生出 拓郎)

今回は人体を構成し、生命活動を維持する物質の最後のひとつ『精(せい)』についてです。
精とは、機能活動や生長・発育などの生命エネルギーの基本となる物質ですが、狭い意味では、精子・卵子・性ホルモンなどの生殖にかかわる物質を示すこともあります。

1.精の種類
  精には2つの種類があり、それぞれ成り立ちが異なります。

先天の精: 父母から受け継ぎ先天的に備わっている精で、元精とも呼ばれます。一般的に親の精が漲っているほど、受け継がれる精も豊富です。 後天の精: 生後、飲食物から吸収した栄養素により生成された精で、五臓の精とも呼ばれます。生後は絶えず、この後天の精により補充されています。
2.精の作用   1. 生長・発育をつかさどる     精には成長・発育を促進する働きがあります。不足すると、幼少期には発育不全成長の遅延などの症状が表れ、成人以降では、足腰の弱りや、脱毛などの老化現象が表れます。
つまり、人の誕生から死に至るまでの全過程が、精の盛衰と相当しています。   2. 生殖をつかさどる     精は、性行為・妊娠・出産などの性機能や生殖機能を維持する働きがあります。それゆえ衰えてくると、性欲減退不妊インポテンツなどの症状が表れます。
また、女性は7年毎男性は8年毎に変化が表れ、それぞれ28歳32歳にピークを迎えます。   3. 気血を産生する     精は気の生成に関与したり、気化作用で血に転化したりします。したがって精が不足すると、気や血も不足しやすくなります。

 上記以外にも精は骨髄や脳を形成したり、免疫力をつけたりと作用はありますが、根本的には生命活動の維持を担っています。
また前回に続いて ≪気・血・津液・精≫ の残りの相互関係を見ていきたいと思います。

1. 気と精の関係   精は気の根源と言われていて、精を元に元気が作られます。また精は気の気化作用によって、常に補充されています 2. 血・津液・精の関係   血・津液・精は、全て体の物質であり、まとめて『陰』『陰液』と言われています。これに対して体の機能的な面を担う気を、『陽』『陽気』と言います。
血や津液は体を濡潤し、精は血・津液をつくる源になります。
また、病邪と戦うために備わっている『正気(せいき)』とは、気・血・津液・精のすべてがあわさってつくられています。