美容と睡眠②

 

執筆者:同仁堂薬局 柳父憲子

 前回、夜の10時から午前2時の間に熟睡している事が美容に必要と書きましたが、その間に質の良い睡眠が取れない方はどのような体質になるのか中医学の立場から見てみましょう。

 中医学では五臓から体について考えますが、この中で“”“”“” の三つの臓が睡眠に深い関係があると考えます。

  女性は月経があるために血液が不足してくると“”の働きがうまくいかなくなります。(簡単中医学の“”又は“”を参照)そうすると精神的に不安定になりやすく、考え事をして眠れなくなることがあります。このような方は血液を補いながらリラックスさせるものを使います。

 

酸棗仁湯[サンソウニントウ]・・・・・不眠によく使う代表的な漢方薬です。心をリラックスさせ、安神薬の代表生薬である酸棗仁[サンソウニン]や体の潤いを補う知母[チモ]などが主体となっている使いやすい漢方薬です。

逍遥丸[ショウヨウガン]・・・・・ストレスが強い時や、ホルモンバランスがあまりよくない時に使います。気の巡りを良くする柴胡や薄荷でストレスを軽減しながら胃腸も整える漢方です。

 

心は神明を主る(簡単中医学 “”参照)

は血液を全身に送るポンプの役割をしており、血が不足すると栄養を運搬できなくなります。この栄養が心に足りなくなると全ての精神活動がうまくいかなくなり、不眠や精神症状が出てきます。

 

天王・竦S丹[テンノウホシンタン]・・・・・体の血液や潤いを補うものが多く入っているので乾燥性の便秘や口渇にも使えます。又、不眠や不安感に使う 酸棗仁や柏子仁[ハクシニン],遠志[オンジ] とそれらを全身に運んでいく丹参[タンジン]や当帰[トウキ]などで構成されているので動悸などの心臓の症状にも使います。

 

脾.jpg 脾は思を主る(簡単中医学 “五行”参照)

 考えすぎたり、思い悩み過ぎると『胃が痛む』、『食欲が減る』、『お腹が下る』などの症状がでてきます。その症状が続くとの運化機能(簡単中医学“”参照)が失調し血液や栄養を作れなくなります。この為“肝血”や“心神”を養うことができなくなり、不眠につながります。

 

帰脾湯[キヒトウ]・・・・・胃腸を元気にして栄養の吸収を良くする人参[ニンジン]と、血液を作り貧血や心身の疲れだけでなく不眠や神経症にも使われる竜眼肉[リュウガンニク]が入っています。この二つの生薬は『気』と『血』をバランス良く補う事により睡眠を整えお肌にも栄養を供給いたします。

これ以外にも不眠に使うお薬は沢山あります。 今回ご紹介したものは、睡眠以外にもお肌を綺麗にするための“血液を作っていく”生薬が含まれています。

 

 睡眠をよくするためにお薬を使う事もありますが、最初に生活の改善をしてみてはいかがでしょうか。 例えば 

①眠る30分前はテレビやパソコン等を見ない(脳が刺激を受けて交換神経が活発になる)。

②・驍ヘ コーヒーや緑茶・紅茶等のカフェインの多いものの摂取を控える。

③普段体を動かさない人は軽いストレッチ等の運動をする。

などです。その次のオプションとして漢方薬をオススメします。これらは依存性がないので続けていく事もできます。