『漢方で乗り切る忘年会』

 

(筆者:川那辺 貴弘)

 

 

早いもので今年も残りわずかとなってしまいましたが、この一年はどんな年でしたか?
年の瀬になると、何故かあれやこれやと、やり残したことを思いついたり、忘れたい嫌な記憶ばかり思い出したりしてしまいますね。そんな気持ちを翌年に持ち越さないためにも、忘年会ですっきりとリフレッシュするのはとても大切な事です。
でもそんな忘年会や新年会が続いてしまうと心配なのが、暴飲暴食による胃腸や肝臓のトラブル、または睡眠不足による疲労ですね。
まずは胃腸ですが、お酒を大量に飲むことにより吸収代謝の可能範囲を超えてしまい、体に余分な『湿』が溜まってしまいます。そうするとむくみやすく、体全体が重だるくなり、軟便や下痢になってしまいます。またお酒だけではなく、お刺身や冷たい食べ物の摂りすぎでも、『湿』を溜めてしまいます。
そしてお酒はビール、日本酒、ワイン、焼酎などの種類やその飲み物の温度に関わらず、アルコールの為に体の中では『熱』を発生します。そうすると乾燥して、喉が乾き、目が充血したり、口内炎ができたりします。
二日酔いの朝を考えると、これらの症状は経験のある方も多いかと思います。
次に肝臓へのダメージですが、ご存知の通りアルコールは主に肝臓で代謝・解毒されます。この処理能力は想像以上に大変で、仮に体重70キロの人で1時間にビールグラス一杯程度しか処理できないと言われています。その肝臓に年末年始で大量の飲酒により負担をかけてしまうと一日中だるさがぬけず、何をするにもおっくうになってしまいます。
肝臓と言うのは『沈黙の臓器』とも云われ、なかなか検査値等では異常が発見できません。そのため肝臓の疲れを早めに自覚して、負担を減らしてあげる必要があります。肝臓の疲労のサインとしては、主に全身のだるさ、目の疲れやかすみ、充血、または白目が黄色くなる、日頃のアレルギー症状が悪化するなどの症状があります。酒
そしてこれらの暴飲暴食による症状を、更に悪化してしまうのが睡眠不足です。ただでさえ忙しい師走の時期に、連日連夜遅くまで起きていると、疲労はとれず、頭も働かず、悪いことずくめです。そもそも、一日の老廃物を肝臓が処理するピークの時間が23時~2時の間と言われていますので、その時間まで夜更かしをする、ましてお酒を飲んでいると、 代謝能力が落ちてしまい、体調の悪化を招きます。

これらの症状を緩和して、気持ち良く来年を迎えるために漢方薬を上手に利用しましょう。宴会が多いこれからの時期に活躍する、代表的な漢方薬をご紹介します。

①竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)
→体に溜まった『熱』を冷まし、『湿』を排泄する漢方薬で、二日酔いの頭痛や吐き気、または予防に応用できます。
②黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)
→体の『熱』を排泄するため、二日酔いの頭痛、目の充血、かすみ、口内炎、または予防に応用できます。
③田七人参(デンシチニンジン)
→三七人参(サンシチニンジン)とも呼ばれる生薬で、血流を良くし、肝臓の代謝能力を上げてくれるので、お酒を飲む前、飲んだ後にはぜひお勧めします。肝臓の疲労による体のだるさにも応用できます。
④晶三仙(ショウサンセン)
→胃腸の消化を助ける働きがあり、食べ過ぎ、飲みすぎによる胃もたれや、ムカつきにお勧めです。
⑤星火温胆湯(セイカウンタントウ)
→不摂生による胃腸機能の低下や二日酔いのムカつき、口の中の不快感、または食べ過ぎて寝付けない時などにお勧めです。
⑥星火健胃錠(セイカケンイジョウ)
→師走の疲れが溜まり、食欲が落ちたり、寝ても疲れが抜けない時などにお勧めです。
また、冷たい物を食べ過ぎてしまった時にも応用できます。
⑦星火健脾散(セイカケンピサン)
→こちらは水分過剰で、慢性的に下痢気味の方や、食欲がなく、疲れがたまっている方にお勧めです。

上記以外にも、二日酔いに応用できる漢方薬は多々ありますが、まずは暴飲暴食を避け、飲んだ日は早く寝る事を心がけてください。また、宴会での食事も、同じものばかりではなく、消化の良い和食を中心に選ぶようにしましょう。